君という光
九龍妖魔學園紀 取手←主
 俺は鎌治と二人、クエストを達成する為に遺跡の中にいた。この階層は闇が多くて、静かな鎌治がちゃんと隣にいるか常に気を張る。はぐれても問題無いかもしれないけど、何かあったら嫌だし。それはプロじゃないバディを連れてる責任、だけじゃないって気付いてる。最初はどうしようかと思ったけど、好きになっちゃったもんはしょうがない。
 明るい場所に出て歩いていると、前回崩した壁が見えてきた。クエスト地点だ。さっさと済ませて鎌治とイチャつくって目的がある俺は、早速北を向いて目を閉じた。クエスト達成の音声と共に出てきた依頼品をアサルトベルトにしまうと鎌治を振り返る。軽く俯いて目を閉じていた鎌治は、俺が終わった気配を感じたのか目を開けた。その顔は、何だか不安そう。
「どうしたの?」
「…………。目を閉じると、自分が何処に居るのか分からなくなる………。」
 躊躇った後そう呟いて、鎌治は憂いに目を細めた。鎌治は時々、凄く儚い。白く骨張った綺麗な手を、俺はぎゅっと握った。
「此処に居るよ。鎌治も俺も。」
 だからそんな、儚い事を言わないで。俺の前から消えちゃいそうで不安になる。
「ああ。はっちゃんが居る所に、僕も居たい……。」
 これからも。そう聞こえた気がして、鎌治に笑い掛けた。
 大好きな鎌治。俺には言えないんだ、鎌治の未来が欲しいなんて。ピアノの事を抜きにしても、安全な未来を危険に引きずり込むような事は言えない。
 でももし、鎌治がそう望んでくれたら。恋愛の「好き」じゃなくてもいい、一緒に居たいと思ってくれたら、その時は。
「鎌治が望んでくれるなら、いつだって一緒だよ。俺の心は鎌治の傍に居るって事、何があっても忘れないで。」
 そうしたら鎌治は俺の手をギュッと握り返して微笑んだ。
「……有難う、はっちゃん。そうだね、僕には君が居る。」

 それから数日後。俺は今日も遺跡にいた。最近は、仕掛や化人を把握した階層迄なら鎌治と二人きりで来る事も増えた。だってやっぱり、二人になりたいからね。扉を開けて一歩先しか見えないエリアに入る。つい反射的に鎌治を見ると、気付いた鎌治が俺を見た。
「僕は此処に居るよ。だから安心して前に進んで。」
 そう言って優しく頭を撫でられて、嬉しくなって思わず抱きついた。大好き、と言い掛けた言葉を飲み込む。あー、恋人になりたいなー。そしたら言い放題なのに。
 鎌治は気弱だけど弱いわけじゃない。少しずつ、でも確実に強くなっていく姿は、俺に元気をくれる。鎌治は俺を光だって言うけど、鎌治こそ優しくてあったかい光なんだよ。……なんて言ったらきっと照れるんだろうなぁ。でも事実だし、探索が終わったら言ってみようか。
「行こッ、かっちゃん!」
 真っ暗な道を、手を繋いで歩き出した。この學園を出る迄に、鎌治はどれくらい強くなるんだろう。俺はどれくらい鎌治を好きになるんだろう。そう思ったら何だか楽しくなってきた。……やっぱり恋愛の「好き」じゃなくちゃ嫌だ。こんな風にずっと一緒にいる為に、頑張って鎌治オトすぞー!










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