サボタージュ
短編
 昨日の夜、先生が夢に出てきた。

 そうしたらもう、会いたくて話したくて触れたくてしょうがなくなった。

 でも、学校の中じゃ話すどころかまともに顔を合わせる事もできなくて、ついに俺は強硬手段に出る事に決めた。





 すでに五時限目のチャイムは鳴り、静まり返った廊下を足を忍ばせて歩く。

 もし他の先生に見つかったら大変だ。

 大事は小事より起こるのだ!

 頷いて、いつも以上に時間のかかる道のりをもどかしく思いながらもそれをこらえる。





 ようやくたどり着いて、俺はそっとドアをノックした。

 小さく、中にいるはずの先生にだけ聞こえるように。

「はい?」

 程なくして聞こえてきた穏やかな声音に胸が高鳴る。

「お、俺・・・」

 すぐに返事が返ってくると思い込んでいたのだが、そういえば自分は授業をサボってきている事を思い出してしまったと顔をしかめた。

「あ・・・、ごめん。その・・・」

 怒られるかもしれないと思いつつ、でも胸の中にあふれる欲求が抑えきれなくてどうしても立ち去りたくない。

 今、会いたいのだ。

「・・・しょうがない子ですね。どうぞ」

 少しの沈黙の後、俺の気持ちを察してくれたのか、くすりと笑う声とともに優しく促されて、俺はドアを急いで開けて中に入った。

「先生!」

「こら。まずはドアを閉めなさい。他の先生に見つかったら私まで叱られてしまいます」

 先生に駆け寄ろうとしていた俺は慌ててドアを閉める。

 ようやく会えたのだ。

 何者にも邪魔はされたくない。

「先生・・・」

 やっと二人きりになれて、俺の心は高揚する。

 どきどきする胸は苦しいぐらいで、俺は一度大きく息を吐いた。

「どうしました?」

 そんな俺の心情を知っているくせにそんな風に聞く先生は意地悪だ。

 俺は少し膨れて、それでももう気持ちが抑えきれなくて先生に抱きついた。

「会いたかったぁ」

 ため息とともに気持ちを吐き出せば、先生もぎゅっと俺を抱きしめ返して耳元に「私もです」とささやく。

 もうそれだけでぞくぞくして、俺は身を離して先生をじっと見つめた。

 キスがほしい。

 甘く頭の芯をとろけさすようなそんなキスが。

 優しく弧をを描く口元に視線がくぎ付けになり、わずかに開いた唇から舌が覗いたのをみた時にはたまらずに自分から口付けていた。

 ずっと我慢していた分だけ最初から濃厚になったキスはお互いの境界線を曖昧にする。

 いつもなら控えめな先生の舌も積極的に俺の舌を捕らえていた。

 それが、触れ合いたかったのは自分だけではないと証明していて嬉しくて仕方がなかった。

「あ・・・はっ、はぁ、はぁ・・・」

 満足するまでくっつけ合ったお互いの口周りは唾液で濡れていて、俺たちは同時に俺は先生の、先生は俺の口元を拭いあっていた。

 シンクロした動きに俺たちは笑い合う。

 ひとしきり笑いあって、でも俺は俺の中にある欲を止められなくて、この先にある行為を切望した。

「・・・・・・先生・・・」

 俺のささやきに先生がにっこりと笑って立ち上がった。

 ドアに向かうその姿にもしかしたら出て行けと言われるのだろうかと危惧したが、先生はドアのカギをかけてこの部屋を完全なる密室へと作り上げて俺の元に戻ってきた。

「特別です」

 私も、会いたかったですから。

そう言われてしまえばもう止める事はできなくて、俺たちはお互いの服を脱がしあった。










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